2005年05月12日

新司法試験制度への懸念と突飛で無謀な挑戦

「既習者」の人達と一緒に勉強する法科大学院の2年次の生活もはや一ヶ月が過ぎ、ゴールデンウィークも明けて、そろそろ授業が佳境に入りつつあります。今学期は裁判例の原文と正面から格闘しなければいけない科目がどっと増え、また理論的にも1年次の基本科目のときよりもう一段深い思考が要求されるような内容が多く、予想通りなかなか面白くかつ大変です。
そんな中で、ちょうど1年くらい前にもここでコメントしたのですが、来年からスタートする新司法試験の仕組みにちょっとした不満を感じています。この点について色々と考えて自分なりの新しい仕組みなども構想してみたのですが、当然ながらそんなものがすぐに実現するわけもないので、かなり突飛で無謀なのですが、現在手元に存在する材料を使って自分で考えた構想を擬似的に実現してみるルートを考えつき、そのルート攻略にチャレンジしてみました。その内容とは?また、その結果や如何に、、、? 擬似的な新しいルートと言っても、何のことはない、ただ現行の司法試験を受けてみるということです。これをどう使ってみようというのか、以下に考えを説明します。

 まず、今の法科大学院の授業、基本的に結構気に入っています。理屈をこねくり回すのは元々嫌いな方ではないし、何がフェアかを考えるのは好きな方だと思うし、自分が今まで空気のような存在として当たり前に使ってきていた社会の仕組みを陰で支えてきたロジックや色んな人の思いを初めて知るというのは好奇心の刺激としてもなかなか心地よいものだなと感じているし。そして、少人数の双方向授業という新しい仕組みへの挑戦に先生達も燃えていて、また出来たばかりの学校に入ってくる生徒のモチベーションもとても高いので、さすがに一部の例外はありますが、ほとんどの授業がとても前向きで、実が濃いなと感じている日々です。そして、今年度で、憲・民・刑・商・行政・民訴・刑訴といった、どんな法律問題にも関わってくるようないわゆるコアとなる科目の勉強がある程度終わり、最終年次となる3年次には、例えば金融法、証取法、倒産処理、知財法、租税法、労働法、外国法などの専門科目や、各種のゼミなどで、より突っ込んだ内容を生徒各自の興味に応じて勉強していけるので、これをまたとても楽しみにしているところです。

 ところが、この3年次を終了して晴れて法科大学院を卒業した直後には、少し前に新聞紙上などを賑わせていた新司法試験が待っており、これを上位2〜3割程度の成績でパスしないと、法曹資格を得る道に進むことが出来ません。そして、この新司法試験で問われる科目はまさに憲・民・刑・商・行政・民訴・刑訴といったコアな科目であるわけです。一応、選択科目として、倒産法や知財法、労働法などから一つを受験しなければならないのですが、その比重はそれほど大きなものとは思えないですし、コアな科目の方も、資格試験という性格からして、あまり特殊な分野の突っ込んだ内容というよりは、およそ法曹の世界に進もうという人間が誰しも身に付けていなければならないような基本的な内容をきちん理解できているかを問うてくるような問題になるものと考えられます。

 大学院の教授達は、「ロースクールでの授業をしっかりとこなしていけば、こういう新司法試験の問題には十分対応できるはずであり、心配する必要ない」と一様に自信ありげな答えを返してくれるわけですが、どうもその自信の根拠がハッキリ分かりません。この試験が、純粋な資格試験として、一定レベルの知識や能力を備えている人間はパスさせるという性格のものであるならば、そのような知識や能力を学生に身に付けさせる自信がある先生は、上記のような返答を自信を持って答えることが出来て当然でしょう。しかしながら、去年のコメントにも書いたように、紆余曲折あって、結局この試験は相対評価の競争試験となっています。一年に一回だけ開かれる試験で上位2〜3割の中に入れないと、結局合格できないわけです。そして、この試験は大学院卒業後5年間に3回までという受験回数制限が付いています。こうなると、それまでの仕事を投げ打ってきたり、そうでなくとも就職せずに相当な機会費用を払って法科大学院に入ってきた学生としては、この試験をパスすることに意識が集中してしまうことになってしまっても仕方がないものと思われます。これでは、せっかくの3年次の、個々の学生の興味やバックグラウンドなどに応じた専門分野の探求というものがどうしてもおろそかになり、先生や学生のやる気をうまく活かすことが出来ず、非常に勿体ない方向に法科大学院が進んでいってしまうのではないかと危惧する次第な訳です。

 ということで、去年のコメントでは、この競争試験という性格を改めて、合格者枠を撤廃し、純粋な資格試験にしていってはどうか、という考えを書いていたわけです。しかしながら、どうも各種の政治的な力が働いてしまうのか、この方向への転換はなかなか容易ではないようです。(法務省の担当幹部などが登場される講演会等で質問をぶつけてみても、「我々としてはこの試験は競争試験とは思っていない。一応合格者総数の目安を公表してはいるが、あくまでも一定レベル以上の能力を持った人だけを合格させるという意図で試験を運営しているのであり、受験生のレベル次第では、現在想定している合格者枠を大きく下回る合格者しか出てこない年があるというような事態も考えられないわけではない」という、「いかにも」な返答が帰ってくるわけで、「自分たちに非は全くない」という姿勢を強調してくれます。)

 そこで、合格者総数を一定程度に抑えたいという要請がどうしても譲れないのであれば、以下のような運用の仕方で試験をしていってはどうか、と今度は考えた次第です。

 すなわち、どうせコアな科目やコアな分野の内容を資格試験で問うのであれば、そのような内容の履修が終了する、法科大学院の2年次終了時点あたりで資格試験を実施するようにしてはどうかということです。その試験で一定レベルに到達していないと判定されて不合格となった人は、2年次を再履修してコアな力の要請に再度励むもよし、あるいは早い段階で自らの適性を見極めて法曹以外の別の道に進むことを決断する契機とするのもよいでしょう。そして、この段階での試験に合格した人達は、晴れて法科大学院の3年次に進み、競争試験の心配に悩まされることなく、自らの興味などに応じて専門的な分野を探求し、十分な力を身に付けた上で社会に出て行くことになるという訳です。これは教育をする側にとっても、確実に一定レベル以上の実力を備えてかつ競争試験にとらわれる必要がなく授業に集中できる学生だけが3年次の授業を受けてくれるわけですから、教育効果を上げていくのも非常にやりやすくなるでしょう。また、この3年次の授業内容を工夫することで、各大学院ごとの独自性などを色々と打ち出しやすくなるかも知れません。(3年次の学生の学習に向けたインセンティブが減るという面があるかも知れませんが、仮にアメリカのロースクールでの現象がある程度日本にも反映されてきてしまうのであるとすれば、大学院での卒業成績によってローファームへの就職条件が大きく左右されるというような形で、一定程度のインセンティブ・システムが働くかも知れません。)

 この仕組み、如何でしょう?なかなか面白いんじゃないかなあと僕としては思うのですが、従来の大学院の仕組みや、国家試験の仕組みから随分と外れてしまうところがありますし、そもそも今想定されている新司法試験はやっと来年から新しい仕組みが始まるばかりというところでもあり、仮に誰かしらが賛同してくれたとしても、こんな仕組みの実現は少なくとも10年以内にはあり得ないでしょうね。やっぱり。

 そこで、もう一つ今の自分のために考えたのが、「今年、現行の司法試験を受けてみる」という、冒頭に書いた話です。現行の司法試験は、憲・民・刑・商・民訴・刑訴というまさにコアな科目だけを対象にしています。そして、今年は総合格者予定数1,500人程度ということで、従来(数年前までは毎年の合格者が500人程度でした)に比べればだいぶ「広めの門」となっています。来年以降もこの「門」は数年間残されますが、新司法試験の開始と合わせて、グッと「狭く」なっていく予定です。そして、司法試験というのは、合格できたらその直後に修習生になって法曹界に入らなければならないわけでなく、試験のあと何年間か間を開けてから修習を受けて法曹界に入るという選択肢を与えられるもののはずです。だとすれば、今年この現行司法試験を受けてしまうことが、まさに上記のように自分で勝手に構想した新たな仕組みを擬似的に作り上げることになるわけです。

 もし、万・万が一、今年現行の司法試験に合格することが出来れば、今年の秋以降は資格試験の心配をせずに大学院での新しい教育の仕組みを満喫でき、専門的な科目も十分に勉強して卒業してから修習を受けに行けばよいということになります。仮に(というか僕のような初学者の場合はこちらの可能性がほぼ100%に近いですが)今年合格できなくても、法科大学院の1年次から2年次の前半にかけてはコアな科目のコアな内容を身に付けることがまさに大学院のカリキュラムであるので、試験の準備と大学院での勉強がピッタリと重なりますから、決してマイナスではないはずです。特に僕のような「未習者」の人間にとっては、早く「既習者」の人達のレベルに近づいて、今後一緒に受けていく授業での学習成果を上げていくためにも、この時期に何らかの中間目標を持って集中して勉強をすることは大いにプラスとなるはずでしょう。

 この疑似ルートにトライする一つの大きな欠点は、2年次以降に現行の司法試験を受けてしまうと、卒業後に受けられる新司法試験の回数の上限がそれだけマイナスされてしまうということです。しかし、僕にとっては、気力的にも環境的にも、法科大学院卒業後新司法試験に2回落ちたあとに、さらにもう1回真剣にチャレンジするということはなかなか難しそうな気がするので、卒業後の受験回数制限が2回になってしまってもまあ実質上のマイナスはそれほどでもないか、と考えた次第です。

 というわけで、去年の春に法律の勉強をほとんどゼロから始めた僕が(まあ20年近く前の大学生のときも一応法学部生であったので、多少の素地はあったわけですが)、先週の日曜日5月8日に現行司法試験の択一試験というやつを受けてきてしまいました。

 もともとかなりの難関といわれるこの試験、実際、相当に大変でした。大学院に入ってからかなり真面目に勉強してきていたつもりの僕としては、去年の秋や今年の冬くらいの段階では、これだけ勉強していれば択一試験に合格することがあってもそんなにおかしな話ではないだろう、くらいに思っていたのですが、春休みに入って本格的に択一試験用の勉強を初めてみて、その内容の膨大さに愕然。試験科目は憲・民・刑の3つだけなのですが、とにかく覚えるべきことが多すぎ。択一では過去問がとても大事だ、ということなので、過去問集を買い込んできて、春休みが2ヶ月近くあるのでその間に過去問集を2回くらいは回して、最後の方はそれ以外に予備校などが出している問題集でも解いて練習してみるか、という予定を立てていたのですが、結局過去問集を最後まで見終わって憲・民・刑の必要な部分の復習が終わったのが2年次の新学期も始まった4月の半ばくらいでした(買い込んでいた予備校の問題集は結局今も手つかずで真っ白のまま、、、)。4月下旬に行われた直前模試というようなものでは36点という平均点以下の点数しか取れず(やっと1回復習が回し切れただけで知識の定着も出来てない時期なんだからしょうがないですよね)、やっぱり無謀すぎるルート設定だったかと、大いに落ち込んでしまいました。

 なので、5月8日の試験を受けるのはやっぱり止めておこうかと何度も考えたのですが、「家族にも迷惑をかけ続けた2ヶ月の春休みは何だったんだ」(っていうか家族に対して説明がつかない!)などなど色んなことを考え、やっぱり決行するとハラを固めました。そして試験直前のゴールデンウィーク。家族には実家に遊びに行ってもらい、一人自宅に缶詰になって、それまでにこなした材料をもう一度見直して頭に定着させるという作業を必死でやりました。自分でも「なかなかすごいなあ」と他人事のように思ってましたが、今までに経験がないくらい、かなり集中してました。お陰で、8日の試験本番が終わったあとは放心状態。二日間ほど色んなことが手に付かないような状況でした。相当、疲れました、、、。

 で、結果ですが、択一試験というのは5つの選択肢の中から正解を一つ選ぶという問題が全部で60問あるという形式の試験で、試験問題を持ち帰ってこられるので、自己採点をすることが出来ます。公式な正解の発表というのはまだ先なのですが、司法試験予備校が競うように予想解答速報というのを発表してくれます。それをもとに自己採点してみると、本番の結果は何と44点!直前の模試からは格段の進歩で、これなら少なくとも平均点は大きく超えているだろうという得点です。最後の追い込み、なかなかよく頑張ったものだと、我ながら感心してしまいました。

 ただ、合格できなければこのチャレンジはここでおしまいです。正式な結果発表は6月1日なのでその日まで何とも分からないのですが、去年の合格最低点が45点で、その前の年が47点だったようです。一方、2チャンネルの掲示板(2チャンネル、初めて真剣に読んでしまいました)や某予備校の講評などでは、今年の試験は去年よりもやや難しかったので、合格最低点は去年よりも下がるのではないかという噂もあったりして、、、。ということで、この44点、結構いい線まで行ってたわけです。すごい!しかし、非常にビミョーなところですね。あと数点勘が当たってくれていれば結構余裕を持って次の論文試験(7月下旬にあります)に向けて気合いを入れ替えるところな訳ですが、何ともビミョーです。(でも、この44点だって、既に多くの勘の冴えによって支えられている点数なので、これ以上を望むのはとんでもない我が儘なんですよね。この環境でこの点数を取れただけで相当にラッキーな人間だと思わずにいらせません。)

 ということで、今は結果を待つしかないですが、今学期の科目はほぼいずれも現行司法試験の論文試験でも対象になるコアな科目ばかりです。もともと大学院での勉強をきちんと楽しめるためにチャレンジしてみたこのルートである訳なので、まずは学校の勉強に身を入れていこうと思ってます。(それにしても、俺、無茶苦茶マジメになったなあ・・・。1年間に3時間しか学校に行かなかった大学生の頃とは、ホントに別人のようです。年が経つと人間って変わるものなんですね。)

 あー、それにしても疲れた。今年に入ってから、ゴルフもゼロ、ヨットもゼロ、だいぶ集中してました。今朝は、すんごい久し振りにゴルフの打ちっ放しに行ってきました。今週末と来週末は久々にヨットレースに出てくるつもりです。

 いやはや、試験は大変です。
posted by Takao at 06:03| Comment(0) | Law
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