2004年02月13日

「ナンバ走り」って知ってます?

最近「古武術」ばやりだそうです。古武術研究家の甲野善紀氏が提唱する「捻らず」「うねらず」「踏ん張らず」の基本動作を現代のスポーツにも応用して成功をおさめる例が多く出てきているそうで、取りあえずその辺のところが視覚的にも分かりやすく解説されている、その名もズバリ「ナンバ走り」という本を発見したので読んでみました。結構、「へぇ〜」って感じです。 本のタイトルは「ナンバ走り 古武術の動きを実戦する」(矢野龍彦・金田伸夫・織田淳太郎著、光文社新書、2003年11月20日)。
 世界陸上の200メートル走で銅メダルを獲得した末續選手の腕の振りが極端に少ない走り方が「忍者走り」としてメディアに多く取り上げられたのは記憶に新しいところだが、あの走り方こそこの「古武術」的身体作法を象徴的に体現している「ナンバ走り」的走り方なんだそうだ。古武術的身体作法といっても色んなポイントがあるようだが、要は「いわば、その根幹要素である『踏ん張らず』『ためず』『うねらず』『捻らず』の実践ということになるだろう。それによって、体への過剰な負荷を受けることなく、瞬間的な力の吐き出しや気配のない動きが可能になり、しかも、怪我の不安からも解放される」ということのようだ。
 本書では、例えば、いかにも体を大きく捻っていそうな印象のある野茂選手のトルネード投法が実は体幹部にねじりは見られないとか、結構「へぇ〜」と思わせられる事例をふんだんにあげながら、この独特な体の使い方にどんな効用があるのかを淡々と説明してくれている。この本には実に多くの写真が載せられているので、それを見ているだけでも結構楽しい。末續の走り、野茂の投球、マイケル・ジョーダンのディフェンス抜き、セリーナ・ウィリアムズのフルショット、千代の富士の股割、等々。
 日本では、江戸時代までは、このナンバ走り的な体の使い方が一般庶民の間にも広く浸透していたらしいが、明治維新以降、西洋的な軍隊の訓練が取り入れられ、さらにその前段として全国の学校の体育教育で西洋的な直立姿勢や西洋的な左右交互型の走り(左右の足と左右の腕を互いに逆方向に捻りながら出していく走り方のこと。一方でナンバ走りは、端的に言えば同じ側の手足を一緒に出す走り方で、体幹部の捻れが極力抑えられる)が徹底して教育されるようになり、ナンバ的動きが忘れ去られることになったとのこと。そして、今になって、こうした古武術的な身体作法を近代スポーツに応用することで、これまでの常識を覆すような画期的な成果が出され始めているという事実。
 明治維新や、さらには第二次大戦後の復興を通じて日本はとても豊かな国になったけれども、その過程で、日本本来の独自の強さや良さは大きく失われてしまった、ないしは忘れ去られてしまったのかも知れない。今ちょうどはやりの映画である「LAST SAMURAI」も、こうしたことを米国産の映画が日本人に教えてくれているように思える。
 今、日本は目標を見失い、国全体がどこに向かって進んでいけばいいのか分からずに立ちすくんでいるような状態に思えるけれど、こんな時こそ日本本来の強さや良さに立ち返り、日本だからこそできる世界への貢献の仕方を考えて、世界の中で意味のある存在になっていけるよう頑張っていくべきだろうなあと思う。何だか「ナンバ走り」からはだいぶテーマが飛躍してしまったみたいだけど。
 ところで、実は昨日、JR新宿駅の地下道で、高校生らしき男の子が、この本でも紹介されているナンバ走りを身に付けるためのトレーニングとなる歩き方(右足を前に出す時に、同時に右腕の肘から先の部分を上に持ち上げる、というような歩き方)を実践しているのを目撃してしまった。パッと見て、何か変なリズムで歩いているヤツがいるなとすごい違和感を感じたのでよく観察してみると、まさにこの歩き方を一生懸命実践していたのだ。体格からしてそのスポーツ能力はあまり高そうに見受けられなかったけれども、そのけなげな努力に、ちょっと感動させられてしまった。
 日本独自の良さを再発見しながら、みんなで前に向かって元気に進んでいきたいものだ。
posted by Takao at 15:55| Comment(0) | Books
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