2004年02月01日

今さらながら、田中角栄ってやっぱりすごい

だいぶ前に買って本棚に置きっぱなしだった「異形の将軍 −田中角栄の生涯」(津本陽著、幻冬舎)を読みました。今さらながら田中角栄ってやっぱりすごいですね。人生の波瀾万丈さがすごい。才能のスケールの大きさがすごい。それでいて人情味臭さが飛び抜けていて、極めて弱い面があるところもすごい。単なる金権政治家というレッテルを貼られて過去に葬り去られるのはあまりに勿体ない。そう強く感じさせられました。 僕は新潟県出身で、父親も、父方の親戚も土建業に関わっているので、もともと田中角栄の存在というのは比較的身近であり、彼がどんな人だったかというのはある程度知っているつもりでいました。しかし今回、この本を読んでみて、自分の不勉強さを痛感しました。まあ、彼が総理大臣になった時、僕はまだ小学校1年生くらいだったようなので、イメージとして彼を比較的身近に感じてはいても、実際のところ具体的な動きについてはほとんど知らずに来てしまっていたんですね。
 それにしても、彼の人生の波瀾万丈さがまずすごい。多少なりとも自分と生きていた時間の重なっている人がここまで凄まじい変化の人生を送っていたかと思うと感動ものです。(ここでは深くは書きませんが、興味のある方はこの本を読んでみて下さい。単なる物語としても十分楽しめる波瀾万丈さだと思います。)
 そしてその才能のスケールの大きさがすごい。彼は、人心をあっという間に掌握してしまうことと、仕事をあっという間に片付けてしまうことにおいて特に尋常でない能力を持っていたと思うのですが、その能力があらゆるレベルで遺憾なく発揮されている。無学の一設計技師として巨大な利益を上げる仕事を次々に手がけたかと思えば、時のアメリカ大統領や周恩来の心までつかんでしまう。
 そしてその人情味と弱さ。彼が総理を辞職した日、目白田中邸の番小屋で田中に惚れ込んだ番記者が田中の差し入れたオールド・パーで飲み明かし、「田中角栄の馬鹿野郎」などと母屋に向かって叫んだとか。そして怒鳴り声を聞いた田中は下駄履きで番小屋に来て、「総理大臣というのはオレにはきつかった」とつぶやき、それを聞いた記者達は涙がこぼれるのをとめられなかったと、、、。
 それにしても、あのロッキード事件という天下の大事件の不可解さというのを、恥ずかしながら僕は全く知らずにいました。アメリカの国会のチャーチ委員会という小委員会に何故か突然ロッキード社の極秘資料が届けられたのがことの始まりだとか。後の説明では「これらの書類は誤って配達されてきた」ということになっているらしいけど、そんなとんでもなく不自然なことがそのまま放ったらかされているというのもすごい話しだ。田中が対中国政策でアメリカと対峙したり、石油ルートの開拓で石油メジャーを刺激していたというのも恥ずかしながら全く認識していなかったけれども、田中の失脚にそうした陰謀めいたものがあったとは、、、。田中政治の金権体質みたいなものは僕らの世代でも十分印象に残るほどマスコミに取りざたされたけれど、それに比較するとこうしたアメリカとの関係などのところはほとんど出てこなかったように感じる(僕の不勉強という面も大きいのでしょうが)。ケネディ暗殺にしてもあれだけ不可解な要素が多いのに政府としては片付いた問題として封印してしまう。アメリカという国の本音と建て前の厳格さも凄まじい。
posted by Takao at 06:45| Comment(1) | Books
この記事へのコメント
僕も同じ本を購読しました。
ある日、近所のTSUTAYAで見て、すぐには買わなかったんですけどいつまでも頭の中に残っていて、気になっていたんですね。数日たってから、確か上巻、下巻の2冊構成だったとおもうのですが、通勤のあいだに一気に読んでしまいました。
やはり、一番は人間性にあると思います。ああいったタイプの人はあまりいないのでないでしょうか?
義理人情に厚く、しかも頭の切れるタイプなんですよね?
僕は、中村さんにそんなところが似ているような感じがしましたけど・・・

それでは、また
Posted by 番匠 修二 at 2004年02月06日 12:51