NHKスペシャルが、今年の4月から1年間、「変革の世紀」というシリーズで、インターネットが生み出した「地球市民」による世界の変革の胎動を特集していくそうです。NHKとしては初めての試みらしいのですが、テレビのシリーズとネット上のウェブでの展開を同時並行で走らせるとのことです。で昨日、1月27日に、このウェブ上の展開の下地づくりというような感じで、ちょっとしたリアルのワークショップが開催されました。元インフォシークでマーケティング部長、編成部長をしていた水島さん(現在は、この「変革の世紀」HPボードリーダーを務める水越伸助教授のもと東京大学大学院情報学環に所属)に呼ばれて、私も、お台場の日本科学未来館で開かれたこのワークショップに参加してきました。
そこでの議論の中味などは、これから展開される(確か2月に正式オープンとか)「変革の世紀」HPをご覧頂くとして、この日にちょっと考えたことを一言。
ワークショップのイントロダクションで、NHKが既に取材活動を進めている中から一部の素材を抜粋して紹介するビデオが上映されました。その中で、WTOの開催地の周辺に陣取って所謂グローバリズムに反対する活動(この活動のことは僕もよく分からなくてこれから勉強したいなと思っているのですが)を展開していたNGOの代表が「(WTOなどの)国際機関や先進国政府は、市民のために行動せず、多国籍企業の利益のために行動している。おかしな話だ」というような発言をしていました。この日は、何だかこの一言が僕の頭の中に一番残った気がします。
国民の生命を奪う恐ろしい病気の感染の危険よりも結果として自らのこれまでの政策の整合性やメンツなどの方を優先してしまうような行動に陥ってしまったどこかの官僚組織を引き合いに出すまでもなく、確かに、少なくとも現状の日本の政府組織の行動は、本当に「国民の幸福な生活」の実現に向けられているのかどうかよく分からない部分が大きすぎるということの再認識が一つ。
一方で、仮に政府が「国民の幸福な生活」の実現に向けて真剣に活動しようとするとして、では、その「国民の幸福な生活」って一体何?という疑問がもう一つ。
前者の問題を解決していく努力や方策を考えるには、まず後者の疑問に答えていくことが必要ですよね。最近はそこが何だかとっても難しいなと思っている次第です。先ほどのNGOの代表は、企業の利益を優先させる政府に疑問を呈していましたが、一方で、確かに自国の企業が多くの収益を上げ税金をたくさん稼いでくれないと、国としての活力(この定義も難しいわけですが)が失われ、政府の活動も手足を縛られてしまう、というのもやはり一つの真理でしょう。経済力が国にとって極めて重要な資源であることは確かな訳です。
一方で、経済力を高めて、経済競争に打ち勝っていくことだけが、本当に「国民の幸福な生活」につながるのかどうかという大きな問題がありますよね。昨年アメリカでおこってしまった「9.11」は、一国の経済繁栄と地球全体の平和や幸福とのバランスの問題を、あまりにハッキリとした形で世界中の人々の前に提示してしまっています。
果たして、政府は何に向かって進むべきなのか?そして、我々市民も、「みんなの役に立つ」ためには何に大きな価値をおいて活動していくべきなのか?昔から幼稚で浅薄な思考だけでフラフラと行動してしまってきている私ですが、それなりに今年はことのことをもっと考えてみたいなあと思っている次第です。
2002年01月28日
市民のための仕事をしない政府って
posted by Takao at 11:43| 政治・経済・公共政策